チルト角度の影響をデータで検証する
直前情報に小さく出ている「チルト」。上げると伸びる、下げると回る——そう言われますが、実際に成績は変わるのでしょうか。約2年・817,591艇分の直前情報を集計しました。ただし素の数字をそのまま読むと逆の結論にたどり着きます。
結論(先に)
チルト帯による1着率の差は素の値で1.1pt。しかしこれは効果ではなく、跳ねチルトを使うのが外側のコースに偏っているためです。進入コースをそろえて比べ直すと、2・3・4・5・6コースではプラス(最大+5.3pt)、1コースではマイナス(-3.6pt)と、正反対の効果が現れます。素の数字で差が見えなかったのは両者が打ち消し合っていたからです。チルトは「上げたから強い/弱い」ではなく、その艇が何を狙っているかのサインとして読むのが実測に合っています。
実測データ:まず素の数字を見る
チルトはモーターの取付角度です。上げる(跳ねる)ほど艇が浮いて直線が伸び、下げるほど旋回が安定するとされます。まずチルト別の1着率を出します。
| チルト角度 | 使われた割合 | 1着率 | 平均展示タイム | サンプル |
|---|---|---|---|---|
| -0.5(下げ) | 53.2% | 16.6% | 6.81 | 434,912艇 |
| 0.0(標準) | 41.6% | 16.9% | 6.83 | 340,486艇 |
| +0.5 | 3.9% | 16.4% | 6.86 | 31,989艇 |
| +1.0以上(跳ね) | 1.2% | 15.8% | 6.81 | 10,204艇 |
展示タイムは小さいほど速い。1着率はコースをそろえていない素の値。
チルト角度別の1着率(コースをそろえていない素の値)
この図だけを見て判断してはいけない理由が本文にあります。
チルト帯による1着率の差は1.1pt。この図をそのまま読むと「チルトを上げるほど悪い」ように見えます。しかしこれは誤読です。
罠:跳ねチルトを使うのは誰か
| 進入コース | チルトを+0.5以上に上げた割合 | サンプル |
|---|---|---|
| 1コース | 3.6% | 136,423艇 |
| 2コース | 3.9% | 136,597艇 |
| 3コース | 4.3% | 136,604艇 |
| 4コース | 5.2% | 136,648艇 |
| 5コース | 5.5% | 136,528艇 |
| 6コース | 8.5% | 134,791艇 |
「跳ねチルト」を誰が使っているかを見る図。
チルトを上げる割合はコースによって4.9ptも違い、最も多いのは6コースの8.5%です。跳ねチルトは主に外から攻める艇が使う道具で、そもそも1着率の低いコースに偏っています。つまり素の比較は『チルトの効果』ではなく『どのコースの艇が使ったか』を見ているだけです。
進入コースをそろえて比べ直す
そこで同じ進入コースの中だけで、標準(0.0)と跳ね(+0.5以上)を比べます。
| 進入コース | チルト0.0の1着率 | チルト+0.5以上の1着率 | 差 | 跳ね側のサンプル |
|---|---|---|---|---|
| 1コース | 56.5% | 52.9% | -3.6pt | 4,928艇 |
| 2コース | 14.0% | 18.5% | +4.5pt | 5,312艇 |
| 3コース | 13.4% | 15.7% | +2.3pt | 5,909艇 |
| 4コース | 11.0% | 16.3% | +5.3pt | 7,148艇 |
| 5コース | 6.5% | 9.2% | +2.7pt | 7,503艇 |
| 6コース | 1.8% | 4.4% | +2.6pt | 11,393艇 |
同じ進入コースの中だけで比較=「誰が使うか」の偏りを外した値。
コースをそろえると景色が変わります。プラスになったのは2コース・3コース・4コース・5コース・6コース、マイナスは1コースでした。最も差が大きいのは4コースの+5.3ptです。
つまり跳ねチルトは、外から攻める艇にとっては上積みになり、先行して押し切りたい艇にとっては足を引っ張る——道具としての性格がはっきり出ました。素の数字で差が見えなかったのは、この正反対の効果が打ち消し合っていたからです。
展示タイムには表れているか
チルトを上げると直線が伸びる、が本当なら展示タイムに出るはずです。平均展示タイムが最も速いのは「-0.5(下げ)」の6.81で、帯による差は0.05秒でした。跳ね側が最速というわけではありません。展示タイムは直線の伸びだけで決まるものではなく、同じ艇で角度を変えた比較でもないためです。
初心者向け解説:チルトとは何か
チルトはボートに対するモーターの取付角度で、-0.5度から+3.0度まで0.5度刻みで調整できます(使える範囲は場によって異なります)。角度を上げると艇首が浮いて水の抵抗が減り直線が伸びる一方、旋回時に艇が流れやすく、スタートも難しくなるとされます。実測では-0.5(下げ)と0.0(標準)で全体の94.8%を占め、跳ねチルトは少数派です。出走表ではなく直前情報に表示されるため、締切間際にしか分からない情報でもあります。
実践:どう買いに活かすか
チルトの数字そのものより、誰が上げているかを見てください。内側の艇が跳ねチルトを入れているなら、逃げよりも思い切った勝負に出るつもりだと読めます。外側の艇なら、まくりを狙う意思表示です。いずれも買い目そのものより『展開の読み』に使う情報で、チルトの角度だけで印を変える根拠は実測では見つかりませんでした。
注意点
- チルトは直前情報にのみ掲載され、当サイトでは締切前に取得したデータを集計しています。
- 使用できるチルト角度の上限は場によって異なります。本コラムは全24場をまとめた平均です。
- 同じ艇で角度だけを変えた実験ではないため、選手の狙いやモーターの性能差が数字に含まれます。
- 1着率は進入コースの影響を強く受けます。素の比較とコースをそろえた比較の両方を載せているのはそのためです。
関連ページ
- 展示タイムは信じていい?場別の的中率を調査(No.13)
- 4コースが最も面白い?「まくり天国」の場はどこだ(No.17)
- スロー vs ダッシュ、進入コースの影響を数値化(No.27)
- コラム一覧
- 検証実績(無加工)
本コラムは公式公開データを当サイトで集計・分析したもので、将来の的中や利益を保証するものではありません。舟券の購入は20歳以上・自己責任で、無理のない範囲でお楽しみください。
データ出典: BOAT RACE オフィシャルの公開データを当サイトで集計(集計期間 2024-03-01〜2026-08-23 / チルトつき 817,591艇分の実測(直前情報より))。「コース」は進入後の実コース(枠=艇番とは区別)。
← 前のコラム: スタート展示と本番STの乖離率——展示を見る意味はあるの | 次のコラム: 同じ決まり手が連続する確率——流れは存在するか →